タイトルは「The Town of The Dead」の略
パクリって言うな!(ぇ








何でこんな事になったのかは、俺には全く解らないし、理解したくも無い――
しかし、これだけははっきりと、確信を持って言える――
今、この世界は…………地獄と化しているという事を――






――――The Town of The Dead――――







「こっ……っっのぉ!」


目の前から迫って来る"モノ"の頭目掛け、両手で握る金属バットをフルスイングする
見事にクリーンヒットしたそれは、『グチャッ』と言う音と同時に、"モノ"の首から上を吹っ飛ばした
首が無くなったソレは、ゆっくりと後ろへと倒れ、ピクリとも動かなくなる
それを確認した少年――悠――は金属バットを下ろし、ゆっくりと息を整え始めた


「はぁ……はぁ…………ったく、いったい何なんだよ、こいつらは……」


そう言って周りをグルリ見渡すと、そこにはさっきまで相手にしていた"モノ"と同じモノが数体倒れていた
同じと言っても、全てが同じという訳ではない
服装・性別・傷痕……それ等は全く違うが、1つだけ共通点があった
それは…………全部が死体であり、にも関わらずつい先程まで動いていたという事
死者が勝手に動き出し、生者を喰らおうと襲い掛かる。この街では、そんな悪夢が現実になっていた


「映画や漫画じゃあるまいし、何でこんな事が起きてんだよ……」


そう愚痴を溢し、息も整った悠はとりあえずここを離れようと歩き始めるが、
数歩歩いた所でピタリと動きが止まる
恐る恐る後ろを振向くと、小さいながらも聞こえて来る【ア゛ァーー】や【ウ゛ァーー】という声と、此方に向かって来るゾンビ達の姿


「……これは急いで逃げた方が良さそうだな」


その場を猛ダッシュで離れ、適当に道を進みながら走って行く
数分走り続けていると、目の前に背中を向けている1体のゾンビの姿があった


「邪魔だぁぁぁ!!」


後ろから思いっきり蹴飛ばし、何事もなかったかの様に走ろうとするが、
横からこっちに迫って来るもう1体の姿。どうやら見逃していた様だ
しかし、知能の欠片も持っていないゾンビ、しかもたった1体ならば対応は到って簡単
バットで頭を狙って、炸裂させるだけである


「吹っ飛べ!」


前に相手をしたゾンビと変わりなく、命中した球(頭)は見事に飛び、壁にぶつかって潰れた
そして再び走ろうとするが、何かに足を引っ掛け、その場に転倒してしまう


「っと、早く起きな【ア゛ァー】っ!?」


首だけ後ろに向けると、さっき蹴飛ばしたゾンビが咬み付く為に覆い被さろうとしていた
起き上がるには時間が足らず、何とか体の向きを変え、これ以上迫られまいとバットの両端を持ち、横に構える
それにより咬み付かれるのは防げたが、目の前には執拗に迫って来るゾンビ
一時凌ぎにはなったものの、危機的状況には変わりなかった


「くっ……や、ば……っっ!」


押し退けようと必死に力を込めるが、それも効果なく、逆にじわじわと押されていた
体勢の問題もあるだろうが、相手はゾンビ――身体のセーブが外れているモノ――である
本来、人の身体にはリミッターがあるが、そんなものは死者であるゾンビには関係ない
最大で80%と常に100%、この力の差は余りにも大きすぎる


「(不味ぃ、このままじゃ……)」


悠は徐々に押され続け、今では20㎝もない所まで来てしまった
このままでは、近い内に喰らい付かれるのは必然だろう
だがしかし…………如何やら天は見放していなかったようだ


「君、そのまま持ち堪えてて!」
「ん?」


その声と此方に走って来ている足音が聞こえて数秒後、『ゲシィ!』と言う音と共にゾンビが横へと転がって行った
少しばかり唖然としながら、転がった方と逆の方向へ顔を向けると
そこには此方に手を差し出し、心配そうな表情を浮かべている少女の姿があった


「大丈夫?」
「(……白と水色の縞……じゃなくて)わ、悪い、助かった。」


差し出された手を握り、悠はゆっくりと身体を起こす


「怪我とかない?ていうか咬まれたりしてないよね?」
「ゾンビには全くやられて無いぞ。まぁ、擦り傷とかは結構あるけどな」
「そっか、良かったぁ」


その言葉に少女は安心したのか、表情を崩した
そして、悠も何処と無くほっとした顔をしている。やはり人に会えたのが嬉しいのだろう
そんな感じでほのぼのしていたが、横では先程転がったゾンビが既に起き上がっていた。が


「ふっ!」


問答無用のフルスイングで再び地面に倒れた


「ふぅ。とりあえず、ここを離れて何処かに逃げないとな」
「あ、それは大丈夫だよ」
「ん?何で「おーい!」……?」
問い掛けようとした時、遠くから声が聞こえた
其方の方向に顔を向けると、少し離れた場所に停車してる車の窓から顔を出して手を振ってる男の姿があった


「実は逃げてる途中だったんだよ。で、偶然に襲われてる君を見つけたって訳」
「なるほど……そりゃ運が良かったや」


もし見つけられなかったら今頃ゾンビに喰われていた。そう考えてぞっとしたのか、微妙に身体が震えた


「さ、君も乗って。折角生きてる人がいたんだから、一緒に行動した方が良いでしょ?」
「そうだな。俺の名前は悠。それじゃ、宜しく頼む」
「私は彩華だよ。よろしく♪」


そう話しながら、2人は車へと向かって歩いていく
果たしてこの先、どの様な事になるのかは、まだ誰も知らない……